切削加工システムの自動化にとって、加工中の切削工具の欠損の発生は、工具自身のみならず工作物にも甚大なダメ-ジを与える危険性があり、さらに工作機械の精度の劣化要因となるため、その対策が重要な課題となっていた。これまでは欠損発生の前駆現象を事前検出することや、欠損寿命の解析的予測に基づいて制御を行うことなどが試みられた。しかしながら、欠損は突発的かつ確率的な事象であるため、その対策は極めて困難であった。本研究では、切削工具にやや過大な負荷を予備切削状態で与え、脆弱な工具は破棄し、残存した工具で加工を続行するという、全く新しい概念IPT(インプロセス保証試験)を提案し、加工システムの信頼性を向上させることを目的としている。 まず、前年度では、IPT概念を提案するとともに、その理論的根拠を確率を加味した破壊力学の適用により明らかにした。また、インプロセス保証試験をCNCシステムに付与する制御アルゴリズムを開発し、ついで、実際にCNC旋盤と圧電型切削動力計、並びにマイクロコンピュ-タを用いてシステムを構成することにより、断続旋削実験を行った。本年度は、引続き実験的検討を行うとともに、保証試験を通過した工具の信頼性向上による利得と、破棄される工具の損失を総合的に考察し、本手法の有効性を評価し、以下のような成果が得られた。 まず、IPT法を適用した結果、平均工具欠損寿命は通常切削に対して2倍以上伸び、欠損の発生確率もワイブルパラメ-タにして通常切削時の0.91から8.5へと大幅に改善された。また、保証試験には最適条件があり、本研究の試験条件では最適保証試験比は1.2、最適保証試験切削回数は50回であった。さらに、IPT法を導入したシステムの経済的評価を行ったところ、IPT法が経済的に有効となる保証試験比の範囲があり、最も有効となる値が存在することが分かった。
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