切削加工中の工具欠損の発生は、工具自身のみならず工作物にもダメ-ジを与え、また工作機械の精度劣化なども招いて加工システムの信頼性を低下させるため、その対策が重要な課題となっている。これまで欠損発生の前駆現象を事前検出することや、欠損寿命の解析的予測に基づいて工具交換や切削条件の修正を行うことが試みられているが、欠損発生は突発的かつ確率的な事象であるため、その対策は極めて困難であり、新しいアプロ-チが望まれていた。 本研究では、加工システムの信頼性を向上させることを目的として、切削工具にやや過大な負荷を予備切削状態で与え、脆弱な工具は破棄し、残存した工具で加工を続行するという、全く新しいIPT(インプロセス保証試験)の概念を提案し、以下のような検討を行った。 まず、IPT概念の理論的根拠を確率を考慮した破壊力学により明らかにした。すなわち、断続切削中の欠損寿命関数の定式化を行い、保証試験を通過する工具の残存確率と保証試験における負荷応力の関係を求め、本手法の理論的根拠を明らかにした。 ついで、インプロセス保証試験をCNCシステムに付与する制御アルゴリズムを開発するとともに、実際にCNC旋盤と圧電型切削動力計、及びマイクロコンピュ-タを用いてシステムを構成するとともに、実際に断続旋削実験を行った。その結果、IPTの適用により平均工具欠損寿命は通常切削に対して2倍以上伸び、また発生確率もワイブルパラメ-タにして約9倍改善された。 また、保証試験を通過した工具の信頼性向上による利得と、保証試験によって破棄される工具の損失を総合的に考察し、本手法の有効性を評価したところ、IPT法が経済的に有効となる保証試験比の範囲があり、最も有効となる値が存在することが分かった。
|