高圧装置の開発は、ブリッジマンに始まる機械的加圧法式により進められてきた。この方式は、力の発生と試料の圧縮が独立に行われる外力方式であり、装置の構造が複雑になるだけでなく、摩擦と圧力漏れの問題を伴う。そのためガスケットが用いられるが、十分な対策とは言えず、これが計算による発生圧力の推定を難しくしている。本研究は、上述の従来の機械的加圧方式における難点を解決する目的で開発した熱膨張の拘束を利用した内力方式による高圧装置を発展させること、とくに圧力室の拡大と高圧発生能力の向上を目指している。本年度は、これらを可能にするために、熱膨張体の加熱方法、圧力室の構成方法、および熱膨張拘束用圧力容器を考案し、装置の設計の際に必要となる発生圧力および容器の主応力分布の計算方法を確立し、これらに基づいて装置を設計・試作した。装置の設計と試作の過程において、1.差分法を用いた温度計算により均一な温度分布が得られる電気炉の設計ができること、2.加熱用ヒ-タとしては弾性係数の大きなSiCが適していること、3.熱および電気絶縁材料としてはZr_2Oが適していること、4.熱膨張体としてNaCIを用いた場合、1000℃で2.4GPaの高圧が発生することがわかった。次年度においては、熱膨張体の融解時において発生する圧力と液体状態での発生圧力の計算法を確立するとともに、金の電気抵抗の圧力依存性を利用した圧力測定法を考案して、効率よく高圧が得られ、かつ溶融後も化学的安定な材料を選定する方法を確立し、これらを確認するための実験を行う予定である。
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