研究概要 |
高圧力を用いる研究および製造には,多くの場合機械的加圧方式の高圧装置が使用されている。この方式の装置は外力方式であり摺動部を含むので,圧力漏れおよび摩擦が避けられない。これらに対する対策としてガスケットと呼ばれる材料が用いられているが,これにより摩擦力による高圧発生効率の低下を十分に改善することはできない。熱膨張の拘束を利用する高圧装置は内力方式であるので摩擦の問題がないが,この装置において発生される高圧は,熱膨張を拘束される材料,すなわち高圧を誘起する材料に依存する。 前年度においては,高圧誘起物質としてNaClを採用し,装置の構成法および発生圧力計算法について研究を進めた。本年度は,NaClとほぼ同じ大きさの熱膨張係数を持ち,弾性係数については約3倍の大きさを有するLiFを高圧誘起物質として採用した。前年度において開発した発生圧力計算法によって本装置においてLiFを用いた場合の圧力と温度の関係を求めた。それにより,例えば400℃および1000℃でそれぞれ1.6GPaおよび4.2GPaの高圧が発生すると予測された。本年度においては,圧力室構成法,電気炉投入電力制御システムの構成法を確立し,さらに本装置圧力室から熱電対線およびリ-ド線を取り出す方法を考案して,圧力および温度の測定を容易にした。一例として,端面に厚さ0.3mmのNaCl膜を焼成した直径5mm,高さ2.5mmの二つのLiF円柱の間にPbを挟み込み,これらを高圧誘起材として圧力室に挿入し,加熱した結果,本装置において400℃で1GPaの高圧が発生されたことを確認した。
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