研究課題
シビヤ摩耗ーマイルド摩耗の遷移条件および摩耗量に及ぼす材料の含有成分と摺動環境の影響について研究した。1. 銅合金の耐摩耗性に及ぼす合金成分の影響:前年度に得られた研究結果について、合金成分と材料強度の関係から解析して、合金元素のNiとZnが銅合金の耐摩耗性に及ぼす影響のメカニズムを明らかにした。さらに、このような成分含有率と摩耗量の関係を立体座標上にプロットして、耐摩耗性を平面で表示することによって、最適な耐摩耗性材料の選択や創製の指針を提示した。2. 鋼の腐食摩耗に及ぼす成分元素の影響:本研究課題の基礎として、腐食摩耗におけるシビヤ摩耗ーマイルド摩耗の遷移現象について研究した。すなわち、空中、イオン交換水中、食塩水中で炭素鋼どうしのすべり摩耗試験を行った。液の腐食性が増すとマイルド摩耗を生じる接触荷重の領域は高荷重側にシフトする。また液中のマイルド摩耗率は低荷重域では荷重によらずほぼ一定値を示すが、高荷重域では比例して増加するので、マイルド摩耗と荷重の関係は折れ線で示される。前者は表面の腐食疲労破壊による摩耗、後者は凝着摩耗に支配されているが、いずれも液の腐食性にともなって増加することが明らかになった。さらに、食塩水中の軟鋼の摩耗では、カソ-ド防食を施すと自然腐食下に比べてマイルド摩耗を生じる領域は低荷重側にシフトするが、マイルド摩耗率は小さくなることが明らかになった。これらの結果から、腐食環境下の鋼の耐摩耗性はシビヤ摩耗ーマイルド摩耗の遷移条件と摩耗量から評価すべきことの重要性が一層明らかになった。このような観点から、腐食摩耗に及ぼす成分元素の影響を引続き研究する予定である。
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