本研究は一様な流れの中に流れに平行に置かれた薄い平板の下流に発達する二次元対称乱流後流を実験的に調べたものである。初期条件は標準的な乱流境界層であり、その運動量厚さをθ_0とするとき、平板後縁からの流れ方向距離xが約25θ_0までの‘近傍場'における乱流構造の推移に着目した。近傍場の構造の変化が顕著に現れる内層域を比較的に拡大するため、θ_0に基づくレイノルズ数が10^3程度の低い範囲で実験を行った。測定には専ら熱線風速計を用い、速度場の挙動のみを調べた。現在までに得られた結果の概要は以下のとおりである。 1.後流中心速度の回復は乱流境界層のy(壁面に垂直)方向分布と類似の変化を示し、初期境界層の壁変数(壁面まさつ速度u_τと動粘性係数ν)を用いてほぼ尺度化される。この特徴は従来の乱流モデルを用いた計算では十分表現できず、境界条件が急変する場に対する乱流モデルの改善が必要である。 2.後流中心線上の速度変動強さとレイノルズ剪断応力の局所最大値は流れ方向位置xu_τ/ν=200付近で最大になる。このover-shoot現象は、従来平板後縁部におけるはく離によるにみなされていたが、近傍後流固有の性質と考えられる。その機構は未だ明確ではないが、条件抽出方を用いた予備的測定によると、初期境界層の内層中に洗剤する三次元渦構造の変形に関係している可能性が高いようである。 3.後流中心線上のy方向速度変動成分のスペクトル解析および中心線をはさむ二点の流れ方向速度変動成分の時空間相関から、従来遠方場で観測されている準周期的な構造は少なくとも近傍場の終端付近からすでに形成されていることが明らかになった。今後、更に組織的乱流構造の消長を定量的に調べるとともに、これを考慮に入れた乱流モデルの検討が必要である。
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