研究概要 |
平成元年度までに、フォトクロミズムを流体計測に応用するための基礎的な実験を行ない、以下に示す結果を得た。 (1)フォトクロミック色素の吸光度;スピロピラン系のフォトクロミック色素を5種類用意し、エタノ-ルを溶媒とした各色素の照射光波長に依存した吸光度を調査した。その結果、1,3,3-Trimethylindolino-6-nitrobenzopyrylospiran(色素A)が紫外域において他の色素の10倍近い吸光度を示した。 (2)レ-ザ入射による着色線の長さ;フォトクロミズムを流体計測に応用するためには、最適な色素濃度およびレ-ザパワ-を設定することが必要である。そこで、エキシマレ-ザ(XeClにて発振、波長308nm)光を各色素を溶解したエタノ-ル中へ入射させ、色素濃度とレ-ザパワ-に関する着色線の長さをスチルカメラによって撮影したフィルムから調査した。色素濃度とレ-ザパワ-がともに高い場合(0.01質量%)には着色線が短く、レ-ザ光の吸収による局所的な温度上昇のため、対流現象が発生する。色素濃度とレ-ザパワ-がともにが低い(0.00125%)場合には、着色線は長くなるが色が薄くなる。これらの結果から、各色素の流体計測への応用に関する色素濃度とレ-ザパワ-の最適な範囲を明らかにした。なかでも、色素Aは、その最適範囲が広く、しかも着色線の寿命が長い点でも優れていることが知れた。 平成2年度には、フォトクロミズムにより流れ場に形成される多くのタイムラインあるいはメッシュをCCDカメラにより撮像し、画像処理により流れ場を解析する手法を確立する。さらに、可視化計測法の有効性を調査するために油槽を製作し、これを用いて円柱後流のカルマン渦列の可視化を行なう。また、境界層の厳密解の知られている円柱まわりの流れについて実験を行なう。
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