本研究で開発された乱流発生装置を用いることにより、風洞の測定部内に乱れ強度が強く(u'/U_0≧30%)、大きなスケ-ル(L_<ux>≧200mm)の渦を含む乱流場を形成できる。本研究では、このような乱流場の中にハニカムを挿入し、乱流中の大規模な渦を分断することにより、乱流レイノルズ数が大きく、強い異方度をもつ葉巻型軸対称乱流場(u'》v'αA2E2w')を実現した。こようにして得られた強い異方度を有する乱流場の減衰・等方化の過程の諸特定を、ハニカムを挿入しない場合の弱い異方度をもつ軸対称乱流場のそれらと比較することにより、以下の結論を得た。 (1)エネルギ-スペクトルの下流方向変化の特徴から、異方性乱流場の減衰を伴った等方化の過程は、次の4つの領域に分けることができる。(i)ハニカムが大規模渦を分断することによる一様軸対称乱流場の実現過程、(ii)大規模渦が急激に等方化する過程、(iii)中規模渦の等方化に伴い慣性小領域が回復する過程、(iV)準等方性乱流としての減衰過程。 (2)等価積分特性距離と等価特性速度に基づく乱流レイノルズ数は、異方度によらず乱流場の規模を表す無次元量として的確な基準を与える。 (3)レイノルズ応力方程式の圧力ー変形速度相関項に関するRottaのモデルにおいて、乱流場の非等方性が乱れの寿命時間によって緩和されると仮定した場合、上記(1)の各領域内ではそれぞれ一定値とみなしうるが、領域の変化とともに不連続的に変化する。 (4)非等方性の緩和時間を渦の特性時間と仮定することにより、Rottaのモデルの定数は非等方度の広い範囲にわたって一定値を示す。 (5)強い異方度をもった軸対称乱流場の主流方向変動速度の一次元エネルギ-伝達スペクトルが本研究により初めて示された。 (6)異方性乱流場の減衰及び等方化の過程の特徴は、本研究で提案された異方性乱流の渦構造に関する概念的モデルによって説明される。
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