研究概要 |
本研究は,申請者がすでに明らかにした放射状液膜流れの乱流遷移を液体の微粒化に応用するための基礎的研究である。静止した比較的小径の円板上で放射状液膜流れをつくり,液膜内部に層流境界層形速度分布を十分発達させたのち,液膜を円板周端から大気中に流出させれば,流下途中で急激な乱流遷移が生じることもすでに明らかにしている。しかしこの場合,実験範囲では微粒化が起こるにはいたっていなかった。そこで,円板を回転させて,その結果液膜に加わる遠心力の作用を利用して,乱流遷移直後に微粒化しようとするのが申請者のねらいである。 本年度は,回転円板上を流れる液膜流れを対象にして,流れの安定性を線形安定性理論により調べた。その結果,円板の回転は液膜内部の速度分布をねじれ形三次元境界層に変化させるが,流れに及ぼす円板の回転の影響が小さい場合には流れを安定化させる,すなわち,遷移を抑制させるのに対して,円板の回転の影響が増大すると流れを不安定化させる,すなわち,遷移を促進することがわかった。また,これらは,二つの異なった不安定性,すなわち,粘性形不安定と変曲点形不安定に基づくものであることもわかった。 次に,回転円板周端より液膜が大気中に流出してできる放射状自由液膜流れについてLDVにより液膜内部の速度分布を測定し,その結果と境界層方程式を数値計算により解いて求めた速度分布を比較して,流れの様子を明らかにした。また,液面の性状を観察して,自由液膜流れの乱流遷移の過程を明らかにした。また,線形安定性理論により自由液膜流れの安定性を解析し,それにより遷移現象を明らかにできる見通しを得た。
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