シリコン単結晶の製造法の一つであるチョクラルスキ-法に関連して、回転場におけるマランゴニ対流に見られる流動特性につき実験的に研究した。すなわち、内径190mmの円筒を回転盤の上に置き、その中に入れたシリコンオイル表面の外周部分を加熱する一方、中央部分の直径100mmを一様に冷却し、この温度差によって生ずるマランゴニ対流の流動パタ-ンを観察した。この対流は、厳密には密度差に基づくものも含まれるが、表面のみの加熱と冷却であるため、その影響は相対的には小さなものとなっている。回数数(回転角速度)が小さい場合、流れは軸対称を保つが、回転数がある限界を越えると非軸対称の流れとなる。アルミ粉を用いた流れの可視化によると、星型の流動パタ-ンが観察される。本実験では、こうした流れの特性をつかむため、粘性の異なる3種のシリコンオイルを用い、シリコン表面温度差を0〜60℃に変化、回転角速度を0〜60RPMで変え、また液表面の温度変動を測定した。そして上記流動パタ-ンが非軸対称となる限界の条件を求めた。関連する無次元数はテイラ-数、マランゴニ数、レイリ-数であり、限界曲線は粘度が小さい場合、つまりマランゴニ数が相対的に大きな場合には、マランゴニ数とテイラ-数の間の関係としてよくまとまり、従来得られている二重円筒間の流動の結果と差は見られない。しかし、粘度の大きな、マランゴニ数の小さな場合の結果はそれとはかなり異なったものとなることが判明した。これはシリコン表面冷却部下方の流れが非軸対称流の発生に重要であることを示しており、流動の観察を含め今後の研究課題として残された。
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