研究概要 |
生体系における各種の熱・物質交換機能は機械工学的立場からは極めて精巧で高性能なシステムであり,その交換機能の解明と工学的応用は重要な課題である。ここでは,迷網タイプの対向流型の熱・物質交換形態に的を絞り,そのメカニズムを熱工学的に解明し,工学的応用への指針を提示することを目的とする。具体的研究実績を以下に要約する。 1.生体系内の対向流型熱・物質交換機能に関する文献調査 2.生体膜を介した熱・物質交換機能に関する文献調査 3.微小循環系に関する文献調査 以上3件の文献調査は終了し、哺乳類・鳥類・魚類などにおける熱・物質交換部位はほぼ対向流型であり,交換は生体膜を介する機構が主で,従来型伝熱様式による熱輸送だけでなく,エントロピをほとんど増加させないで輸送できるのが最大の特長である。物質交換に関しては、能動輸送や選択的物質輸送が顕著で,非平衡熱力学的検討が不可欠と思われる。微小循環系の熱流体力学的問題はほとんど未知の分野であり、以上の調査研究からシンプルな対向流型の熱交換モデルを考え,有限要素法によって数値解析を試みた。すなわち,4.対向流型熱・物質交換機能の数値計算解析であり,bioーequationの形式化から始め,U字型ル-プにおける熱・物質交換性能を解析した。NーS式及びエネルギ-式も併用して、5.膜を介しての熱・物質交換機能に関する基礎実験の結果を参照しながら,境界条件(とくに対向膜面において)を設定する試みを行った。inーvivoではないが,工学的には意義ある境界条件と思われる。この計算においては,6.微小循環系に関する基礎実験のデ-タも解析の手がかり与える重要なもので,赤血球や血漿の局所的ポピュレ-ションや熱溶量の局在性なども明らかし,精度の高い解析が期待される。温度や濃度の分布も計算できる見通しが得られたので更にに進展させる。
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