研究概要 |
本年度には,高温装置の実環境下にある金属実在表面のモデル化の理論研究から始めた。実在表面の熱ふく射性質は,表面の微視的な幾何形状と表面被膜によって強く特徴づけられるが,これを系統的にとり扱うためには,実在表面の一般的な記述法を確立することがまず重要である。そこで,第1には,あらい金属表面について,これを自己相似構造をもちながら配列される離散安素のフラクタル的な集合として表する次元モデルを提案し,そこでの電磁波の干渉・回折挙動を調べた。第2に,このモデルに対して,金属表面上に形成される酸化被膜の結晶粒の一つずつを3次元非平行薄膜安素と見るモデルを結合し,高温酸化過程における反射性質の推移を表現できる手法を提案した。これらの研究により,前年度の実験で見出された反射スペクトルの規則的かつ一般的な過渡現象を計算機上で記述することが可能になった。 実験研究では,第1に,実在表面における拡散反射性質を的確に測定するための装置として,回転楕円体面鏡式の垂直入射半球反射率測定装置を試作した。この装置は,熱工学のふく射測定においてもっとも重要な吸収率スペクトルを1回の走査で測定することを可能にするものである。第2に,この装置を基礎研究に応用する試みとして,金属が機械研摩面の可視・近赤外反射の波長・角度特性を系統的に調べる実験を行い,鏡面反射性があらい表面においても顕著であることを示した。第3に,高温のパラジウムの近赤外域での反射・放射スペクトルの過渡挙動を調べる実験を行った。表面における酸化・解離反応の結果として,1000Kの近傍でスペクトルには明瞭な温度ヒステレシスが現れることを見い出した。
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