研究概要 |
本研究は,食品凍結の伝熱工学的に取り扱うための資料を得ることを目的として行われたもので,次の手順で研究を遂行した.ここでは,食品の細胞列を矩形容器の列,食品成分中最も凍結に関係している自由水を食塩水,細胞膜を半透膜でモデル化した.しかし,これらの現象はきわめて複雑であるので,まず矩形容器列の基本要素である矩形容器単体を取り上げ,その挙動を理解した後,容器列への実験へと発展させた.実験条件としては,矩形容器単体の場合,冷却速度,10〜30mmとセル高さ,0〜5wt%と食塩水濃度を変化させて,これらの冷却・凍結挙動に及ぼす影響を検討した.また,容器列の場合,セル高さを10mm一定とする代わりに,セル壁を溶媒は通過するが溶質は通過しない半透膜と,いずれも通過しない銅板とした.これらの冷却・凍結過程は,ホログラフィ実時間干渉法により可視化測定された.上記の実験は,昨年度も同様に行われたが,冷却速度の調節が難しく,干渉縞写真における縞数が密過ぎて定性的評価しか行えなかった. その結果を踏まえ,今年度は,主として干渉縞写真から温度を読み取り,定量的に熱伝達特性を評価した.その結果,過冷却解除直前の熱伝達特性は,水の場合上面冷却面近傍に形成される非対流層により停滞するが,食塩水の場合特にセル高さ30mmの場合密度反転による非対流層が形成されないため,熱伝達特性は促進する.また,仕切り板(銅板・半透膜)による冷却・凍結過程への影響は,可視化写真より,銅板の場合完全に水溶液が遮断されているのに対し,半透膜の場溶媒(水)の通過は認められるものの,熱伝達特性に関しての差異は定量的に認められなかった.これは、半透膜の場合,液体の遮断効果が予想以上に大きく,特に食塩水5wt%の場合熱伝達特性は仕切りのない場合に比べ減少し,あたかもセル高さが減少したように働くことが分かった.
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