研究概要 |
現在の制御工学において線形制御理論は完成の域に達しているが,非線形の分野の開発が著しく遅れている。現実の制御系はほとんどが非線形系である。たとえば、代替エネルギ-の有力な方法として注目されているトカマク型核融合炉の制御,ロボットに代表されるメカトロニクスの分野の制御,マ-ガリン製造の場合の水素添加化学プラントなど例を挙げれば,無数にある。従来これらの系に対する制御方式は動作点の周りで線形化し,PID制御方式を使うか,最適レギュレ-タまたは線形極配置法による安定化制御が主に使われていた。しかし動作条件や初期値が変われば制御則を設計し直さなければならないため,制御系としての機能が十分に発揮されていない。本研究では一般的な非線形系に対するモデル追従形制御系の設計法を開発し,システムのパラメ-タに誤差がある場合でも,出力誤差がゼロに収束し,内部状態がすべて有界になるロバスト条件を求めた。これらの手法をロボットマニピュレ-タの制御に適応し,有効な結果を得ることができた。ロボットの状態方程式はラグランジュ法によって一般的に求められるわけであるが,求心力,コリオリカを含む複雑な非線形系である。この非線形は確定既知関数と測定誤差を含むパラメ-タベクトルの内積で記述することができる。制御入力を測定パラメ-タから得た公称値を基にして,非線形補償を行う。得られた系は弱非線形を含む多次元2次遅れ系になる。かつ零点は無い。この構造はロボット特有のもので,制御により著しく特性を向上せしめることが可能である。弱非線形の効果を無視した多次元2次遅れ系に対して線形モデル追従形制御系を構成すれば,任意の極配置が可能である。ロバスト安定条件はパラメ-タ誤差に関する積分不等式をグロンオ-ルの手法で解くことによって求めることができる。また出力誤差は線形系の極を十分安定することで,任意の程度に小さくすることができる。シミュレ-ションの結果パラメ-タ誤差が50%である場合でも十分良好な結果が得られた。
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