本研究では、ロボット用近接覚センサとして超音波距離センサを取り上げ、それらを複数組み合わせることにより、ロボットが対象物に接近した状態におけるロボットと対象物の空間的な位置関係を把握する手法を開発することを目的としてきた。 昨年度の研究では直径10[mm]の超音波センサを7個組み合わせることにより、対象物の表面形状を識別する手法を提案し、試作したセンサによりその有効性を示した。 今年度はまず、昨年度の研究に基づき、反射波の形成メカニズムの解析をさらに進めるため、理論解析と実験を進めた。本研究で用いた超音波センサを用いて観測される反射波について理論と実験の両面から調べた結果、次のような事柄が明らかとなった。1)本研究で用いた送受波器により音波の送信と受信を行う場合、指向特性はそのメインロ-ブだけを考慮するだけで理論値と実験値はよい整合性を示す。またその指向性は指数関数で近似できる。2)平らな面からの反射を基準とした反射波の振幅・位相の周波数特性を求めることにより、未知の反射面の形状情報を得ることができる。特に、角や複数の反射面をもつ対象物の場合は、反射波中の振幅・位相特性が平面からの反射と比較して顕著な違いが現れるので識別が可能である。3)送受波器の指向特性は周波数に依存するため、反射波の周波数成分を利用する場合は送受波器の指向特性の周波数依存性を同時に考慮する必要がある。以上の事柄を実験によって示し、本研究で開発したセンサの今後の改良を指針を示した。 次に近接覚センサを利用したロボットの制御実験であるが、センサ情報に基づくロボットのリアルタイム制御を行うためサンプル周期を昨年度より短くする必要が生じ、今年度さらなる改良を施した。その結果、サンプル周期を2[msec]以下とすることができ、センサの性能評価に必要な性能を達成した。
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