本研究は、人工現実感システムを作成すること、様々な状況下における、人間の空間認知ならびに操作特性を明らかにすることを目的としている。 本年度実現したシステムとしては、手の位置、姿勢、動作を検出する特殊なデバイスを用いて、計算機内部に構築した仮想アクチュエ-タを操作するシステム(操作システム)、頭部搭載型立体映像システムと、頭部の位置、姿勢を検出センサを組合せ、仮想的な立体空間を眺め回せるシステム(表示システム)、両者を組合せ、仮想空間中のアクチェ-タを立体的に眺めながら操作することのできるシステムを完成した。なお、表示、操作ともに、仮想世界との対応関係を定めるドライバを複数個作成した。本システムを用いた作業や実験に有効な作業範囲を知るため、実空間とほぼ同一に表示ドライバを用いて、表示距離と体感距離との誤差を測定した。その結果、視点から60cm程度までが、正確な距離感を感じられる有効作業範囲であることが判明した。 人間の空間認知について以下の実験を行った。 実空間と異なる表示、操作ドライバを用いる場合、仮想空間固有の空間感覚を獲得するのに、仮想空間内にある物体の量によって、その容易さが変化するのではないかという仮説をたてて、この空間感覚の生成を調べるため、仮想世界内部にある物体数を変化させ、指標として作業能率を測定した。この結果、特に仮想空間中の物体が極端に少ない場合、仮想空間中でのからだの向きが不明になる場合が観察された。この問題は、仮想空間を様々に変化させ引き続き実験を予定している。 また、作業能率にシステムのパフォ-マンスが与える影響を調査中である。パフォ-マンス変数としては時間遅れに注目した。操作、表示間に故意に時間遅れを持たせ、作業能率を測定した。被験者数が十分でないため、まだ有意な結果は得られていないが、今後実験を重ねる予定である。
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