研究概要 |
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂は、その化学構造上、極性基が少なく結昌化度も高いため、インキや接着剤に対して親和性のない構造をしている。このため、あらかじめ前処理を施して樹脂表面の親和性を向上させる必要がある。こうした前処理には、取り扱いが容易で処理装置の安定性とコストの点からコロナ放電処理装置が使用されている。これは電極間に絶縁物(誘電体)を介在させ、ギャップ部のコロナ放電により表面処理を行なおうとするもので、従来のコロナ放電処理装置の電源回路(30〜50kHz,5〜20kW)には真空管が用いられていた。 本研究は、新しい電力用半導体素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いた電圧形インバ-タ・直列共振回路方式のコロナ放電処理システム(30〜50kHz,5kW)の開発を目的として、以下の研究成果を得た。 1.一般に欠点とされている、高周波昇圧トランスの漏れリアクタンスと浮遊容量を、本システムでは共振リアクトルと共振コンデンサとして逆用した。その結果、外付けのリアクトルやコンデンサが不要となり、システム構成を簡単化できた。 2.ダイオ-ド整流回路を用い、力率制御(周波数制御)により出力調整を行う方式を採用したが、ロスレススナバ回路を接続することによって、インバ-タ効率は96%が得られた。 3.制御回路に新たに開発したPLL回路を採用し、常に負荷状態に追従し、安定したコロナ放電を行なうことができた。 4.無声放電理論に基づく電極の等価回路を導出し、従来は経験的に論じていた周波数とギャップ長の関係を定性的に説明することを可能にした。
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