最近、交流損失の極めて少ない超電導線材の開発が進められ、電機子巻線も超電導化した全超電導発電機の実現の可能性が高まりつつある。この全超電導発電機を用いると、従来の半超電導発電機よりも一層の高効率化・高密度化が期待でき、また現在研究中の超電導の変圧器・ケ-ブル等の極低温機器と低温レベルで直接整合がとれ、全超電導の電力系統システムが構築し易くなる。しかし、超電導線材は本質的に交流損失を発生し、また磁界の大きさやその変化率の臨界値以上でクエンチ(常電導転移)を生じるので、全超電導機の実用化に際しても線材の超電導状態の維持安定化が最優先事項の1つとなる。本研究では、シミュレ-ション及び実験の両面から、全超電導機に関してこれらの資料を提供することを目的としている。特に、全超電導機の設計的な観点からシミュレ-ションを進め、以下のような結果を得ている。 (1)まず、実用規模の大型機として、定挌容領1000MVAの全超電導機(2極、60Hz、遅れ力率0.9)の概念設計を行った。 (2)次に、この1000MVA機が系統に接続されていて、その系統内で故障が生じる場合のシミュレ-ションを行い、界磁及び電機子巻線部の磁界の数値的検討を行った。その結果、特に電機子巻線部の磁界は同期リアクタンスの大きさに対して、かなり影響を受けることが判明した。 また、超電導状態の維持安定性の高い制御システムを構築することが極めて重要なので、従来のAVR及びGOV制御以外にもそれらのシミュレ-ションができるようにプログラムの開発を進めている。 更に、以上のシミュレ-ション研究と並行して、全超電導機を模擬した実験モデル機の設計・製作を行っている。次年度にまたがりその実験モデル機に対する実験結果の蓄積を行い、全超電導機用コイルについての考察を進める。
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