超電導発電元は、従来機と比べて多くの利点を有する。これまでは、界磁巻線を超電導化した、いわゆる半超電導機を対象とした研究が主流となっていた。しかし、最近では交流に対して極めて低損失の超電導線材が開発されているため、電機子巻線も超電導化した全超電導発電機の可能性が高まりつつある。ちなみに、従来の同期発電機の制御システムには、AVRやGOVが一般に用いられている。しかし、全超電導発電機に用いる超電導線は交流損を発生しまた磁束及びその変化率の大きさ等に対して臨界値を有するので、その制御システムには超電導状態の安定性が高く、かつ制御効果が高い方式のものを採用する必要がある。 本年度は、従来のAVR及びGOV制御よりも制御の効果が高くかつ超電導状態の維持安定性が高い制御システムの検討を行うために、それらのシミュレ-ション用プログラムの開発を行った。ここでは、全超電導機用として有望視されるSMES(超電導磁気エネルギ-貯臓装置)制御方式を採用し、またその装置としてはシングルブリッジ方式のものを想定してプログラムの開発を行った。前年度に概念設計した実用規模の大型全超電導発電機(定格容量1000MW)の設計緒元を用いて数値的な検討を行った。その結果、SMES制御を行うとAVR及びGOV制御方式と比べ、短時間で負荷角δの動揺が抑制され、制御の効果が極めて高いこと等がシミュレ-ションにより確かめられた。 更に、以上のシミュレ-ション研究以外に全超電導機を模擬した実験モデル機を製作し、またそのモデル機を用いて実験を行った。まず、モデル機を液体ヘリウムで冷却して超電導状態にした後に、インダクタンス等の電気的定数の実測を行った。次に、研究室既存の可変調波数電源(400V、25kVA、80〜800Hz)に接続して超電導コイルを励磁し、磁界等の実測を行った。
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