SF6ガス中に、放電あるいは熱分解によるSF6分解ガスが含まれると、ガスの絶縁耐力が減少するという報告があるが、そのメカニズムについて研究した例は少なく、実態は明らかではない。本研究では、絶縁耐力の減少の原因をガスの電子付着係数の減少と推察し、コロナ放電によって生成されたSF6分解ガスがSF6に含まれた場合の電子付着係数の変化を測定し、絶縁耐力診断に使用することを目的としている。電子付着係数の測定は、定常タウンゼント法(ベロ-ズ式直線導入機を購入し装置の改良を行う。)および、パルス法によって実施した。SF6ガスは電子付着能力が非常に強いため、SF6分解ガスがSF6中に含まれても、電子付着係数の変化は小さいと考え、変化をモニタ-するのに最も有効な測定条件の検討から開始した。まず、SF6ガス、圧力、P=1〜20Torr、E/N=1〜90Tdにおいて、パルス法によって、異なる2種類のイオン成分によるコレクタ-電流波形(SF6^ー、SF5^ーと予測できる。)を区別して観測することができた。次に、SF6ガスを1気圧、SUS鋼製容器に充填し、負性コロナ放電(電圧13KV、電流0.07mA)を所定時間だけ行うことによってSF6分解ガスを含むSF6サンプルガスを生成した。そのガスをドリフトチュ-ブ内に導入し電子付着係数を測定した。コロナ放電3時間後のサンプルガスにおいて、圧力、P=1Torr、E/N=10Tdにおいて、電子付着係数η/Nは、SF6と比べて約5%減少する興味ある結果を得た。これはSF6分解ガスによってガスの電子付着係数が減少したことを意味している。この結果を、即、絶縁耐力診断に適応するにはデ-タが不十分である。さらに、E/Nの高領域での測定、あるいは、現在、分解ガスとして認知されているHF、SO2(予備実験で確認した。)等のガスをSF6に混入しての測定結果の検討等が必要である。
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