Si-LSIのコンタクト構造におけるAlとSiとの低温での反応を回避するために、それ自身物理的化学的に安定な金属間化合物をメタライゼ-ション材料として用い、界面での自由エネルギ-を低下させた積層構造を実現するという観点から、Al-Cu系化合物を薄膜の形で形成するための要件と、構造、組成、電気的特性を明らかにするのが本年度の目標である。化合物薄膜は、AlとCuの複合タ-ゲットを100〜350℃の基板温度に保ったパイレックスガラス上にスパッタすることにより作成した。成膜条件を検討した結果、タ-ゲットの面積比をCu:30%としたものを用いることにより、Al_<0.30>CU_<0.70>(原子吸光分析の結果)の組成の膜が得られ、X線回折の結果から、構造的にもAl_4Cu_9の化合物が形成されていることが確認された。透過電子顕微鏡観察からも、この膜は基板温度250℃で粒経1000Å程の多結晶であることが知られた。材料としての熱的安定性を調べたところ、調べた範囲の480℃まででは、X線回折パタ-ンの本質的な変化は認められず、構造的にも安定であることがわかった。このことは非平衡過程で形成された化合物薄膜が、本来の平衡状態での安定相(>500℃)以下の温度では構造変化を起こし難いことによるものと思われ、メタライゼ-ション材料としては好都合な特性である。さらに、この薄膜の抵抗率は基板温度100〜200℃で〜30μΩ-cm、250℃で<15μΩ-cmであり、十分低抵抗率な材料であることがわかる。このようにAl-Cu系金属間化合物として、熱的に安定で、十分低抵抗な化合物を薄膜の形で得ることができ、本年度の目標を一応達成することができ、次年度の目標であるSiとの反応性の検討につなぐことができた。
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