研究概要 |
前年度においてAl_4Cu_9金属間化合物薄膜の作成要件を検討し,その結晶構造,熱的安定性ならびに電気的特性の検討を行い,得られた薄膜が化合物として十分熱的に安定であること,また低抵抗であることを明らかとした。本年度においては引き続き,Al_4Cu_9薄膜をメタライゼ-ション材料として適用するにあたって重要となるSiとの反応性の検討を行った。まず,Siウエハ上にAl_4Cu_9薄膜をたい積させた直接コンタクト構造では,基板温度250℃以上でSiの低濃度混入が認められるものの良好な界面を形成することが明らかとなった。また界面の急峻性は,Al_4Cu_9の結晶性の良否にも依存しており,安定で良好な化合物結晶を作ることにより,界面での余分な物質輸送が抑制されることが知られた。次に,この界面の熱的安定性を評価するため基板温度250℃で作成したAl_4Cu_9/Si系の熱処理を行い,界面を通しての物質輸送の様子をオ-ジェ電子分光分析を用いて調べた。その結果,熱処温度600℃以上で膜中へのSiの低濃度拡散が進行するものの,濃度は増えることはなく,このことが界面崩壊の要因とならないことが知られた。界面は700℃の熱処理でCuのSi中への拡散が認められるようになるが安定である。さらに熱処理温度が上昇すると,CuのSi中への拡散によって化合物が分解し,界面が崩れるが,この温度はAl_4Cu_9化合物の共晶反応温度780℃に近い。さらに,薄膜中へのSiの混入を防ぐ目的で,TiNバリヤを用いたAl_4Cu_9/TiN/Si系を作成し,その界面の安定性を同様に検討した。この系は,670℃までは安定に,積層構造として機能することが明らかとなった。このように,本研究では,Al_4Cu_9化合物をメタライゼ-ション材料として用いた十分安定なコンタクト系を実現することができ,当初の研究目的を十分にはたすことができた。
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