1.p形黒リンの光導電特性 (1)光導電のスペクトル応答 黒リンの光導電スペクトルを0.3eVの基礎吸収端まで観測することに初めて成功した。その結果、黒リンが可視から4.1μmの近赤外にわたる広い波長域で良好な光感度を有することを明らかにした。また、基礎吸収端付近での応答を解析することにより、直接許容遷移であることを実験的に示し、バンドギャップの温度依存性に対する実験式を得た。 (2)光導電の時間応答 半導体レ-ザによるパルス励起によって、黒リンの光導電の時間応答を調べ、その温度及び電界依存性を検討した。その結果、減衰時間が低温では一定であるが室温付近では短くなること、また高電界でも短くなり、1x10^<-7>sに達することが分かった。この値は、黒リンが10MHz以上の高周波動作に応答可能であることを示す。 2.表面反転層の検討 黒リンの低温での磁気抵抗効果とホ-ル効果のデ-タを解析することにより、バルクの正孔伝導に対して、表面二次元層における電子伝導の存在を見いだした。この表面反転層と光導電との関連については今後の課題である。 3.ビスマスフラックス法による各種黒リン結晶の作成 同方法で針状結晶とともに新たに黒リン多結晶薄膜を作成することができた。膜面の一方は平滑で、他方は粒径が数μmの微結晶からなる粒状構造をもつ。黒リン薄膜は実用的見地から注目されるが、電気的光学的特性は現状では単結晶に劣っており、今後の改善が必要である。n形黒リン結晶の作成にはまだ成功していない。
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