光アイソレ-タは光技術の発展に不可欠な光学素子であるが、従来、これらはYIG結晶などで構成されていて高価であり、その低コスト化や新しい材料の開発が強く望まれている。このような背景から本研究では、これまで誘電体光導波路として主に利用されていた透明プラスチックによる光アイソレ-タの構成が可能であることを指摘し、その開発研究を進めた。以下に本課題で得られた研究成果の概要を記す。 先ず、数多くの透明プラスチック材料の磁器光学特性を測定し、その結果、ポリスチレン(PS)やポリαメチルスチレン(PαMS)などのプラスチックは反磁性材料の中でも比較的大きな部類に属するヴェルデ定数を有することを初めて明かにした。また、これらポリスチレン誘導体のヴェルデ定数の分散特性や性能指数を種々のレ-ザ光を用いて測定し、特にPαMSは490nmの短波長域に性能指数のピ-ク値を有してArレ-ザ用(波長488nm)の磁器光学材料として利用できる可能性を示した。 次いで、上述の結果を基にArレ-ザ用プラスチック光アイソレ-タを試作し、その動作特性の測定と実用化への問題点を検討した。その結果、パルス磁場型でアイソレ-ション約20dB、挿入損17dBが得られ、短波超域パルスレ-ザ用光アイソレ-タとしての実用化が期待できることを初めて具体的に示した。さらに、永久磁石型プラスチック光アイソレ-タの試作も行い、新たに提案した磁石の配置法を用いたときに約12dBのアイソレ-ションを得た。この場合、プラスチック試料に含まれる複屈折の影響が大きいため、アイソレ-ションとしてはまだ十分ではないが、複屈折の低減化によってその値を実用レベルまで改善することは可能である。 以上のように、光学的に有用な結果が数多く得られたが、今後も新しい材料の探索と磁器光学素子化の検討を進めていきたい。
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