知的CAIのための適応型教育方式に関する研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01550276
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 渡辺 成良 群馬大学, 工学部, 助教授 (90008532)
• キーワード: 知的CAI / 個別指導 / ITS / 適応型教育 / 自然言語インタ-フェ-ス / 教授方略 / エキスパ-トシステム / 双方向対話

研究概要

1.人工知能の研究成果を教育における計算機援用教授システムの開発に積極的に活用する知的CAIの研究では、自然言語理解、知識表現及び推論機能を学習者とシステムとの自然な双方向対話、学習者モデル、教授方略に適用し、適応型教育システムの構成法の理論的解明並びにモデル・システムの作成によってその実現性を究明しなければならない。本研究ではこのような知的なシステムの構成を可能とする方式を明確にするために、
(1)構文解析と格文法解析によって入力文を解析し、これをフレ-ムによる内部表現に変換する自然言語理解の方式を考案した。学習者が電気回路の解析で用いる典型的な表現を調査し、文法、単語辞書、文脈の解析機能を組み込んだ自然言語インタフェ-スを構築した。
(2)内部表現の意味解析から学習者モデルを生成し、理解レベルの診断結果に従って適切な助言や指導を行なう直接的教授方略を考案した。
(3)学習者の記述理解に必要な、対話のモデルとして問題解決手法をスクリプトで表現した。解答診断および学習者の理解レベルをスクリプトのモニタ-によって判定し、適切な助言機能を構成した。この機能により、教授方略、学習者モデル、助言方法、出題方法の相互関係を明白にすることができた。
2.実際に電気回路に関するシステムを構築し、60名を対象にシステムの評価を行なった結果、システムからの応答文を解釈できる程度に教授内容を理解した学習者には有効であることが判明した。しかし、理解内容を文章で適切に表現できない初心者や、システムにない専門知識を適用できる上級者には、自然言語インタフェ-スに問題が生じることも判明し、これらに関する研究の必要性が新たに発生した。

研究成果

• [文献書誌] 渡辺 成良: "ScriptーBased Monitor for MixedーInitiative Intelligent Tutoring Systems" 電子情報通信学会英文論文誌. E73. 315-322 (1990)
• [文献書誌] 渡辺 成良: "Teaching Circuit Analysis:A Mixed Initiative Intelligent Tutoring System and its Evaluation" Elsevier Science Publishers. 81-87 (1990)
• [文献書誌] 渡辺 成良: "知的CAIにおける自然言語理解の役目" 電子情報通信学会信学技報(教育工学). 90. 43-48 (1990)
• [文献書誌] 渡辺 成良: "回路知識の獲得をモニタする機能の例" 情報処理学会コンピュ-タと教育研究会報告. 90. 1-8 (1990)
• [文献書誌] 渡辺 成良: "Teaching Cirauit Analysis:A Mixed Initiative Intelligent Tutoring System and its Evaluation" Proceedings of the IFIP TC3 Working Conference on Advanced Research on Computers in Education. 19-26 (1990)
• [文献書誌] 渡辺 成良: "スクリプトに基づいた個別指導:回路解析のスキル獲得のための知的CAIにおける直接的指導方略" 人工知能学会. 6. (1991)
• [文献書誌] Etienne Werger著 岡本 敏雄監訳: "人工知能と知的CAIシステムー知識の伝達の計算的・認知的アプロ-チ" オ-ム社, 508 (1990)
• [文献書誌] 渡辺 茂監修: "知的コンピュ-タシステム事典" 産業調査会, (1991)