研究概要 |
生体のような高濃度散乱物質内の構造を、光により透視撮影することをめざし、基礎的研究を行った。理論的・実験的検討を通して、以下の結果が得られた。 1.波長700〜900nmの近赤外光は、光出力1Wでも、手掌程度の厚さの生体組織を十分観測可能な強度で透過する。手掌の透過像中には、骨格はほとんど認識されないが、血管網が明確に観測される。2.血管像の可視深さを計測したところ、生体表面より数mmの深さであることが分かった。これらの結果より、透過光量は十分得られるが、通常の方法では深部構造が観測できないことが分かった。従って生体透視のためには、透過光中の強大な散乱光成分に埋もれた微小な直進光成分を抽出する必要があることが明らかになった。3.散乱光成分を差動的に除去する原理と空間的コリメ-ション法とを組み合わせた新たな散乱光成分抑制手法を考案した。4.ピコ秒光パルスを用いて透過光計測を行った結果、直進光の到達時間に対応する部分の信号を利用することにより,散乱光成分を大きく抑制できることがわかった.また,この原理が実際の生体組織にも有効であることを確認した.5.断面形状の異なる構造物(三角柱・四角柱・円柱)を乳球懸濁液中に沈め、光による断層像撮影を試みた。通常のコリメ-ション法と新たに開発した方法とを適用した結果、前者では検出不可能だった構造物を、後者により断面形状の認識が十分可能な断層像としてとらえることができた。6.高輝度光源と高感度光検出装置を中心とした生体透視実験システムを試作し,実験動物の内臓の動きをリアルタイムイメ-ジングすることに成功した.7.異なる波長において透視像を撮影し画像間の演算を行うことにより,体内組織の酸素化状態の変化を無侵襲的にイメ-ジングできる可能性を見いだした.
|