研究概要 |
本年度は、昨年度得られた基本的な動物実験デ-タをもとに、不整脈認識プログラムの改良と評価を行った。具体的には、まず第一に不整脈認識プログラムの開発に不可欠な心室細動波形を得るために、動物実験において従来の電気ショックではなく冠状動脈を徐々に結紮する方法を用いて心筋梗塞の状態を作りだし、頻脈から心室細動へ次第に移行する心不全の代表的過程を3時間にわたり計算機内に記録した。さらにFFTとほぼ同程度の精度で実時間で基本周波数成分を抽出可能なインタ-バルヒストグラムを用いて不整脈認識プログラムを開発した。 第二に、不整脈認識プログラムの除細動器への組込みを行った。組込みプログラムの開発用コンピュ-タとしては、32ビットCPUを用いたパ-ソナルコンピュ-タ(IBMーPC/AT相当品)を使用した。次に、開発したアルゴリズムを用いた検出装置をシングルボ-ド型の16ビットマイクロコンピュ-タにより実現し、その動作を確認した(NEC V25 CPU)。 第三に、動物実験に基づく装置の評価とまとめを行った。動物実験における結果では、冠状動脈を徐々に結紮することにより、実験開始後約1時間半から心室頻脈、続いて心室細動の状態が観察された。判定基準となる周波数成分比率は、それぞれ洞調律2〜4Hz70%以上,頻脈4〜8Hz20%以上,心室細動8〜20Hz25%以上と定め、入力される心電図デ-タに対し5秒間隔に1秒以内の処理時間で判定結果が出力されることを確認した。さらに期外収縮が発生する場合も、2〜4Hzの周波数成分パタ-ンに変化が現れることを確認した。以上をまとめると、新しい認識プログラムを組込んだ細動検出装置を開発しその動作を動物実験により確認した。今回の成果は、本年11月にアメリカで開催されるIEEEの国際学会において発表する予定である。
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