本研究は、光通信や光情報処理用の半導体光スイッチ・光変調器の試作することを目的とした。光スイッチの動作原理はpn接合面近傍での電子密度空乏化による光吸収率の変化を利用するもので、当該研究者らが独自に考案した原理である。光スイッチは形状から導波路型と平面型に分けられる。両者とも液相エピタキシャル成長法により作製した、AlGaAs/GaAs系で構成した。 導波路型については、平成元年度の研究で8Vの印加電圧に対し3%程度の消光比が得られ、2年度には4Vの電圧変化で99.97%(35dB)の消光比が得られるに至った。この値は電子工学的な原理によるあらゆる光スイッチの中で、最高の値であろう。改善の主要因は不純物濃度の検討や素子設計の進歩によっている。また、光吸収のメカニズムが目的の原理によっている事も確認できた。なお、10MHz程度の変調特性を得ることもできた。変調特性は静電容量により定まるが、測定した静電容量もほぼ設計どうりであり、多層化やストライプ構造化により広帯域化が期待できる。 平面型としては、平成元年度は、フランツ・ケルディッシュ効果による動作を検討した。2年度は導波路型の成果に基づき電子密度空乏化による素子を作製した。平面型では原理的に多数のpn接合を必要とするが、結晶成長技術の限界から2対のpn接合までを作製した、この試料を3個重ねて6対のpn接合とすると、18Vの印加電圧変化で10%の消光比が得られた。今後は電圧印加方法の改善や多層化を試み、高性能化をめざす。 なお今後、本素子をEDAC(Electron Depleting Absourption Control)光スイッチ・変調器と呼ぶことにした。
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