研究概要 |
本研究は、次世代の地熱開発のための、既存き裂の新しい計測法の開発を目的とするものである。本研究は、地下き裂内に導電性トレ-サ(電解液)を流しながら、き裂周辺の電位分布の過渡応答を測定することにより、地下き裂の分布ならびにそこを流れる流体の挙動を推定する具体的な手法を確立しようとするもので、次のような研究を実施した。1.理論的検討:人工き裂に注入された導電性トレ-サ(電解液)の人工き裂内の流れならびに、それによるき裂周辺の電位分布の過渡応答を数値シミュレ-ションにより求めた。さらにそれに基づき、電位計測によるき裂内流体挙動の推定法の検討を行った。2.計測システムの作製:トレ-サ注入、電流印加ならびに電極電位測定を同時に行うことのできる坑井内流電ゾンデ,トレ-サ検出用導電セルおよび電位計測用電極を組み合わせた電位計測ゾンデ,ゾンデを設置しながら坑井を加圧するためのリュ-ブリケ-タならびに交替直流による電位計測のための同期検波システムの作製を行った。3.東八幡平フィ-ルドにおけるフィ-ルド実験:東八幡平フィ-ルドでは、2つの坑井(F-1,EE-4)を水圧破砕による人工き裂で連結した循環系が実現されている。本フィ-ルド実験では、この人工き裂を測定対象として用いた。実験ではF-1井側から電流を流しながらトレ-サを注入し、EE-4井内での電位分布の過渡応答を測定した。本実験により、本フィ-ルドの広域的な電位分布、自然電位の影響、ケ-シングの影響、トレ-サ濃度の時間変化等計測上の問題点を明らかにするとともに、それに対する対策を検討し実施した。さらに、フィ-ルド実験で得られたデ-タの解析を行い、2で検討したET試験法の検証を行うとともにそれに基づき、人工地下き裂内のトレ-サの形状ならびに大きさを推定する具体的な手法の提案を行った。
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