研究概要 |
本年度は、平衡性の観点から多次元ディジタルフィルタの最適設計法を研究し、数値実験を行うことにより、最適設計法の利点と欠点を明らかにすることを主な目的をした。 (1)多次元ディジタルフィルタの状態空間表現を検討し、多次元の場合においても可制御性と可観測性の強さが等しくなる平衡形実現が可能であることを確認した。 (2)(1)の結果より、2次元ディジタルフィルタの設計法を考察した。その結果、Kungの平衡形近似法を2次元ディジタルフィルタに拡張することによって、2次元ディジタルフィルタの平衡形近似が可能であることを明らかにした。また、この近似の際に、近似仕様の対称性を利用することにより、従来の約半分の計算量で設計が可能となることを明らかとした。 (3)多次元ディジタルフィルタの量子化誤差の解析を行った。この結果、平衡性が成立するとき、多次元ディジタルフィルタの係数感度ど丸め誤差が最小となることを明かとした。この結果は、1次元ディジタルフィルタにおける係数感度と丸め誤差の解析結果の一般的な次元への自然な拡張となっている。 (4)平衡性の概念に基づく多次元ディジタルフィルタの設計法は、上述のような利点の他に以下に述べる欠点を有することも明らかとなった。すなわち,この方法では、ディジタルフィルタが状態方程式で表されているため,本設計法によって得られた多次元ディジタルフィルタの乗算器数は極めて多くなり、このフィルタの処理速度は低下することとなる。この問題を解決するためには、フィルタ特性と係数行列の対称性を利用することや、平衡性を幾分くずした状態でディジタルフィルタを設計するとこが考えられる。
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