研究概要 |
ディジタル制御は制御則の変更・改良をプログラムの書換えに帰着させ制御の柔軟性を増すため,ディジタル計算機を積極的に導入している。しかし,計算機の離散動作に伴って種々の問題が生ずる。その一つとして連続時間制御対象が最小位相でも離散化モデルに不安定零点が生じてしまうことがあげられる。このため,従来からディジタル制御系では逆システムや適応制御系の設計は困難とされてきた。また,この不安定零点が原因でディジタル制御系の安定余有,感度特性等は連続時間系に比して大きく劣化しまう。 この問題に対して本研究では2ーDelay制御と言う方法を導入し,従来の出力のサンプリングに対してもう一つ補助的なサンプリングを施すと,この問題が解決できるが分かったので,その理論的体系化と応用に関して研究したところ,おおよそ以下の結果を得た。 1)2ーDelay制御を使うと零点が任意に配置でき,安定な逆システムが構成できる。 2)状態が直接観測できない場合でもロバストなディジタル制御系が構成できる。 3)感度関数や安定余有に続いて相補感度関数についてその最適値を求めた。 4)2ーDelay制御系の諸特性が分ったので実際に電動機やロボットア-ムで外乱抑圧制御実験をしたところ良好なロバスト性が得られた。 5)パラメ-タ変動やサンプル点間の高周波振動等の問題を解決すべくH∞制御について研究を行なった。その結果,連続時間系も含む数々の新しいH∞制御理論に関する成果が得られた。 以上から,本研究の当初の目的は達成され,2ーDelayロバスト制御理論について体系化ができた。この成果は今後産業界で有効に利用できるものと考えられる。今後はH∞制御をより深く追及し,より着実に2ーDelayディジタルロバスト制御理論に結び付けて行きたい。
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