研究の前半においては (1)微分両眼視差・両眼強度差(視覚系)と微分両耳時間差・両耳強度差(聴覚系)検出法に基づくハ-ドウエアアルゴリズムの基礎研究と電子回路実現 (2)上記の微分検出量に基づく物体の凹凸感と光沢感、音源の方位感と距離感の抽出原理の定式化 を行った。具体的には、視覚系で得られた両眼位置ずれと両眼強度差の同時検出法を聴覚系に適用し両耳時間差両耳強度差の同時検出法を確立した。また後者において時間差-強度差の空間と音源の方位-距離の空間との変換関係を学習的方法によって定めるセンサフュ-ジョンの手法を新たに導入した。 研究の後半においては (2)上記の検出量の2次元累積分布に基づく立体形状知覚機能、単一音源の空間定位機能の定式化 (3)微分検出量の確率的累積法の基礎研究とそれに基づく多層半透明物体の同時立体知覚機能、複数音源の同時定位能力の定式化 を行った。具体的には、両眼視差によって得られる物体の凹凸スライスを動的に累積合成し広範囲な物体形状を計測する原理を聴覚系に適用し、頭部の運動を利用した絶対的な音源定位感形成のモデルを開発した(発表予定)。さらに微分両耳時間差検出法の複数音源応答モデル(口頭発表済み)を視覚系に適用し、ステレオX線像や他層透明物体の同時奥行知覚モデルを確立した。本研究は両眼質感の定量化のためのモデルとして新たな発展が得られ、アナログ電子回路による試作機がほぼ完成の段階にある(発表予定)。
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