本年(初年度)には主として理論的検討を行った。その成果は次の通りである。 1.連続時間システムの特性多項式が区間多項式である場合、システムが安定でしかも非振動であるための必要十分条件を導いた。その条件はカリトノフの定理と並行しており、わずか2つの多項式の同じ性質を確かめるだけでよい。また、この結果からカリトノフの定理が別途に証明できることが明らかとなった。 2.行列のポリト-プ(凸結合)は、システムの不確かさの有力な表現手段の一つである。一方、状態空間表現されたシステムの安定性に関連の深い行列としてフルヴィッツ行列の他にP行列、M行列などの実行列のクラスがある。行列ポリト-プが果たしてどのような条件のもとで、これらのクラスに属するのかを検討し、一定の成果を得た。 3.連続時間システムの特性行列に摂動項が含まれる場合のロバスト安定性の検討については、すでにいくつかの従来の結果がある。これらを批判的に検討することにより、より鋭い一連のロバスト安定条件を得た。用いられた方法は、リヤプノフの接近法である。 以上の他に、現在進行しつつある小課題として、単一のリヤプノフ関数が覆うことのできるシステムのクラスを明示する問題がある。これは予期されるすべての変動を考慮しても、その安定性がある一つのリヤプノフ関数によって保証されているようなクラスのシステムはどのような形をとるかを考察していることになる。
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