邦楽の教育の推進が叫ばれているが、西洋音楽と比べて工学的手法による解析が少なく、教育方法の改善への提案は殆どされていない。 例えば、日本の伝統的音楽ことに江戸時代に発達した音楽・芸能では音階を楽しむ他に、各音階で異なる音色を出して、音色を楽しんでいる。これは母音の多い日本語による特長であり、さらに自然のままが良いとする日本文化と関っている。 本年度の研究では、信号処理装置と邦楽の特長を抽出するためのコンピュ-タ。ソフトウェアの作製を行ない、このプログラムと装置を用いて尺八の音の解析を行なった。その結果を以下に順番に示す。 1.A/D変換ボ-ドとパ-ソナル・コンピュ-タを組み合わせ、10μ秒の周期でサンプリングを行なうことができるように装置を構成した。ここでひとつの音の流れに対して0.1秒間隔で1000個づつサンプル値を取り込めるようにした。 2.FFTによる解析の欠点を除外するために音階の同定とスペクトル解析を分離し、音色の解析が容易に行なえるようコンピュ-タのプログラムを作製した。 3.尺八の吹奏を初心者、熟練者に演奏をしてもらい、その倍音構造を解析し、熟練度がわかるように解析を行なっている。 4.以上の尺八の音の解析により熟練者の演奏した音階の方が正しく、倍音構造においては、倍音が豊かである。 熟練者の方は5次以上の高倍音が多く含まれ、倍音構造だけで尺八の音名が決定できる可能性のあることが示された。電子音楽器の尺八音は、音色のうえで西洋音楽的である。 以上のように本年度の研究は平成2年度にまとめられるよう初期の検討を行なったものである。
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