最適制御理論の実系への適用が顕著となるにつれ、対象となるシステムは多種多様となり、一般に大規模化している。本研究は、複数個のサブシステムが時間の経過とともに、結合あるいは分離を繰り返すシステムの最適制御問題に関する研究を行うものである。本年度は、初年度であり、以下に示す研究を行ない新たな知見を得た。 (1)状態値および操作量の次元が時間増大する線形離散時間型制御系において、その出力を次元増大する目標値出力に追値(追従)させる最適制御問題を解析した。評価関数として、次元増大する目標値との偏差の二乗を最小にする最適操作量の合成法と、最適操作量を用いたことによる最適評価値を求めた。得られた最適制御則は、従来、考察されている次元固定系の追値制御問題を包含するより一般的なものである。ここでは、次元増大系を対象としたが、今後、次元減少系を含む、次元可変系へ理論的発展を検討する。 (2)次元固定系の状態推定法としては、カルマンフィルタが確立しているが、本研究では、対象とするシステムの次元が時間増大し、その間接不完全観測値の次元も時間増大する次元増大確率系に対する最適状態推定問題を解析した。推定評価として、最小分散推定を設定し、正規分布型確率変数の条件付期待値演算により、最適推定アルゴリズムを求めた。得られた最適推定則は、従来の次元固定系の最適推定問題を包含するより一般的なものである。 次年度においては、次元可変系の実系例として感潮河川流域の農耕用拓地内に設置されている排水路系を考え、ポンプによる強制排水路水位制御問題への適用について検討する。
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