平成元年度の研究では、任意形状の三次元翼が調和振動する際に翼に加わる非定常流体力について、ダブレット分布を用いた新しい数値解法を提案し、従来から知られている結果と比較することによってその信頼性を確かめた。また、いくつかの平板翼、三角翼に対して実験を行い、定常揚力特性および上下揺の場合の非定常揚力特性を比較したところ、理論と実験の一致は、全般的に良好であること、三次元翼の非定常揚力特性は位相平面上へプロットすることによって容易に理解しうることなどを示した。 さらに、胴体と翼が一体として存在する場合の両者の流体力学的干渉問題について考え、後流渦は翼からのみ流出すると仮定した近以理論と実験とを比較した。 平成2年度は、自由表面下の2次元水中翼に働く流体力について、翼厚を考慮した数値計算プログラムを開発するとともに2種類の対称翼に対して実験を行い、比較検討した。定常翼に働く流体力は、流れ関数による表現を使って翼表面に分布された接線ダブレットに関する積分方程式を解いて求めた。また、非定常問題については翼および後流渦から発生する波動項を含めてグリ-ン関数の計算を行い、速度ポテンシャルに関する積分方程式を導いた。実験は、NACAOO12およびNACAOO24の2種類の翼を用い、没水深度、定常迎角などを変化させて定常流体力と強制上下揺時の非定常揚力などを求めた。これらの理論計算値と実験を比較した結果、(1)定常揚力は没水深度が小さな時に大きくなり、没水深度に応じて定常揚力が0となる迎角がある、(2)翼厚の違いによる流体力の変化はそれほど大きくないが、翼厚が大きいほど付加質量係数は一般に小さくなる、(3)自由表面影響は前進速度と動揺周波数の比が一定の関係を満たすときに大きく表れる、などの結論を得た。
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