鋼橋の溶接継手部に対する各種非破壊検査方法の適用性およびそれらの検出能力と、亀裂が存在した場合の疲労寿命に対する破壊力学を用いた評価から、構造物の使用目的に合致するように溶接欠陥の許容限界を設定する方法を明らかにすることを目的とし、本年度は以下の検討を行なった。非破壊検査法の1つである超音波探傷法を用いて欠陥形状・寸法を測定するための第一段階として欠陥を含む弾性材料中の波動現象のス-パ-コンピュ-タによる数値シミュレ-ションを行った。また、実際に超音波探傷試験を行い、欠陥形状の違いが反射波に及ぼす影響を調べた。その結果、本シミュレ-ションは波の伝播速度に関して波動現象を正確に再現していること、欠陥で波が反射するとモ-ド変換がおき、縦波と横波の両方が発生するが、反射後の縦波と横波の進む方向に特徴があること、円孔、楕円孔、スリットからの反射波の波形および周波数特性は類似していることなどが明らかとなった。種々の溶接継手部を有する桁試験体の変動荷重試験を行ない、各溶接継手部の疲労強度、疲労亀裂の補修効果などについて検討した。この試験ては、道路橋で実際に生じるような荷重履歴をパソコンでシュミュレ-トすることにより変動荷重を求め、またそれをそのまま疲労試験の荷重の制御に用いている。疲労試験結果は、各種の疲労設計基準での設計疲労強度と比較されている。 定量的な欠陥評価を目的として、各種溶接継手に対して疲労亀裂進展解析を行なった。この解析は、一定振幅応力下および対数目盛で表した応力頻度分布曲線形状直線、上に凸および凹となるような変動応力を対象として行なった。さらに、その結果を利用して疲労設計に用いるべきS-N線について検討した。
|