理論的研究〈平成1年度〉 1)溶接薄肉H形断面を有する短柱の最大強度を弾塑性有限変位解析を行って求めた。解析に用いた数値モデルは、フランジの幅厚比を10、16、18、22、ウェブの幅厚比を35、50、60、70と変化させたものを組み合せた断面寸法とした。新たに定義した等価幅厚比により整理した解析結果に基づいて、最大強度の推定式の提案を行い、過去の実験結果が良い精度で推定できることを示した。 2)次に、中心圧縮を受ける溶接薄肉H形鋼柱が連成座屈を生じる場合について、短柱解析により得られた強度低減式を用いた耐荷力算定式を提案し、提案式による結果が、種々のパラメ-タを変動させた数値モデルに対する弾塑性有限変位解析の結果と良く対応することを示した。 実験的研究〈平成2年度〉 1)〈短柱試験〉軽量圧延H形鋼部材について、断面の寸法を4タイプに変化させ、部材長を6種類に変化させた計24体の供試体を製作し、局部座屈に支配される短柱の最大強度を求めた。実験結果を、フランジとウェブのそれぞれの幅厚比パラメ-タの積の平方根で定義される等価幅厚比によって整理した結果、幅厚比が相当大きな供試体でも十分な強度が得られることが明らかになった。 2)〈長柱試験〉断面寸法を3種類、細長比を3種類、荷重の偏心量を3種類に変化させた計27体の長柱供試体について圧縮強度試験を実施した。その結果、中心圧縮柱については、道路橋示方書の直柱の基準強度曲線に比べて十分大きな強度を有すること、偏心圧縮柱については、偏心量が断面2次半径の0.15倍以内ならば、基準強度曲線で安全側に評価できることが明らかになった。 3)理論値と実験値の統一的、総合的評価については、今後の課題とする。
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