本研究は、鉄筋コンクリ-ト部材の長期変形の設計法の確立に資するために、荷重の大きさとその履歴の相違が長期の変形に及ぼす影響を実験的に検討するとともにコンクリ-トのクリ-プに起因する応力の履歴を考慮し得るボンドスリップ法に基づく長期変形、ひびわれ幅および応力の経時変化の予測方法の開発を目的としたものであり、平成元年度で得られた成果は以下の通りである。 1.コンクリ-トの応力履歴を考慮するために重ね合せ法を用いかつ断面に一様に生じる乾燥収縮の影響を取り入れた、ボンドスリップ法に基づく、鉄筋コンクリ-ト曲げ部材の変形、ひびわれ幅、応力などの経時変化の解析のための基礎方程式を定式化した。 2.本解析法は、ひびわれ間隔が適切にされれば一定の持続載荷を受ける場合および持続載荷が変化する場合の鉄筋コンクリ-ト曲げ部材の平均曲率、コンクリ-トの圧縮ひずみ、鉄筋ひずみおよび平均ひびわれ幅などの経時変化を、それぞれ比較的精度よく予測し得る。 3.いわゆる有効弾性係数を用いた場合と比較し、本解析値は、一定の荷重が持続して作用するときにはコンクリ-トの圧縮応力が小さく、また持続荷重が増大したときには大きく評価し、これより、コンクリ-トの応力履歴の影響を定量的に取り扱えることを明らかにした。 4.鉄筋とコンクリ-トとの間に生じている付着応力の持続荷重による減少は少なく、時間経過に伴うひびわれ幅の増大は付着のクリ-プにおるすべり量の増大とコンクリ-トの乾燥収縮により引き起こされることを実験および本解析により明らかにした。
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