本研究は、鉄筋コンクリ-ト部材の長期変形の設計法の確立に資するために、荷重の履歴を影響因子とする長期の持続実験を平成元年度より開始しており、その実験結果を用いて、重ね合わせの原理に基づく応力履歴を考慮した変形解析法と有効弾性係数法に基づく変形解析法の適用性、およびそれらの解析結果について検討を加えた。平成2年度で得られた成果は以下のとおりである。 1.一定の持続荷重を受ける場合、静的載荷時に対する変形の増加量は鉄筋応力度が1500kgf/cm^2以下では荷重の大きさに依存し、それ以上では依存しない。また、鉄筋応力度で1500kgf/cm^2に相当する一定の持続荷重を受けた場合の平均曲率は1000kgf/cm^2に相当する持続荷重を受けた後、210日で同一の持続荷重を受けた場合の平均曲率よりも約30%大きく、無視し得ない応力履歴の影響が認められた。 2.一定の持続荷重および変動する持続荷重いずれを受ける場合も、応力履歴を考慮した解析方法は平均曲率やコンクリ-トのひずみをかなりよい精度で予測できる。これに対して、有効弾性係数法に基づく解析方法は一定の持続荷重を受ける場合には比較的予測精度が高いが、持続荷重が増大する場合には、荷重の増大後変形を過大に評価する傾向がある。 3.一定の持続荷重下では、応力履歴を考慮した方法と有効弾性係数法に基づく方法によるコンクリ-ト応力の差は最大で約10%あった。変動荷重がある場合にはその差はさらに大きく約20%であった。しかしながら、実測による検証は今後の問題として残った。 なお、応力履歴を考慮した予測方法は付着特性に及ぼす応力履歴の影響を取り込めば複雑な応力履歴を受ける場合にも適用できると考えられるので、今後はこの点について検討したい。
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