本研究は、鉄筋コンクリ-ト部材の長期変形の設計法の確立に資するために、荷重の大きさとその履歴の相違が長期の変形に及ぼす影響を実験的に検討を行い、さらに、重ね合わせの原理に基づく応力履歴を考慮し得る変形解析法の開発し、その妥当性と適用性について検討を加えた。本研究で得られた成果は以下のとおりである。 1.コンクリ-トのクリ-プと乾燥収縮、付着すベり関係とそのクリ-プ特性を取り入れ、さらにコンクリ-トの応力履歴の影響を考慮し得る、鉄筋コンクリ-ト部材の長期変形を予測するための基礎方程式を定式化した。 2.一定の持続荷重および変動する持続荷重いずれを受ける場合も、応力履歴を考慮した本解析方法はひびわれ間隔が適切に決定されれば、鉄筋コンクリ-ト曲げ部材の平均曲率やコンクリ-トのひずみ、鉄筋ひずみなどの経時変化をかなりよい精度で予測できる。 3.鉄筋応力度で1500kgf/cm^2の一定の持続荷重を250日にわたって受けた場合の平均曲率は、1000kgf/cm^2に相当する持続荷重を受けた後、210日で同一の持続荷重を受けた場合の平均曲率よりも約30%大きく、無視し得ない応力履歴の影響が認められた。 4.鉄筋とコンクリ-トとの付着応力の持続荷重による減少は比較的小さく、時間経過に伴うひびわれ幅の増大は付着クリ-プにおけるすべり量の増大とコンクリ-トの乾燥収縮によることを実験および本解析により明らかにした。 5.応力履歴を考慮した本解析法と有効弾性係数法に基づく方法によるコンクリ-ト応力の差は一定の持続荷重下の場合最大約10%、変動持続荷重を受ける場合約20%であった。
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