粘土や砂の力学的挙動がその微視的構造(Fabric)に強く依存することは、今や土質力学における常識である。また岩盤の水理・力学的性質を解明する場合においても、地質不連続面によって作られる構造の重要性が強く認識されるようになった。この研究は、土や岩盤に共通する材料の構造特性を一般的な形式で論ずると共に、地盤材料の弾・塑性構成式の構築に新しい方法論を開拓しようとするものである。すなわち、数理的な形式論から脱し、地盤材料の特質をとらえた弾塑性構成式の確立がその眼目である。研究の成果を要約すれば以下の通りである。 (1)地盤材料の構造特性(Fabric)を一般性の高い構造テンソル(あるいはクラックテンソル)によづて定義し、その幾何学的意味を明らかにした。 (2)粘土、砂、岩石材料の構造テンソルの既知な材料を用いて、主に一軸、三軸、透水試験の室内実験を行い、構造特性と材料の水理・弾性的応答との関連性を明解した。地盤材料の性質は、一般的に著しく構造特性の影響をうけることが証明された。 (3)地質不連続(節理)を持つ岩石材料の弾性について考察し、マイクロメカニックスの立場から、弾性コンプライアンスを構造テンソルを陽に含む形式で定式化した。また、理論的の妥当性は、(2)の実験結果と比較検討することによって検証された。 (4)有限要素法による弾・塑性数値解析を行い、局所的挙動と全体的挙動との関連について調べ、構造特性の重要性を明らかにするために、連続体近似のモデルに必要な基礎的デ-タを収集した。
|