前年度に開発したハイブリッド斜面安定解析法を検証するため、大阪府北部の砂岩系の風化残積土の切土斜面において、実大野外実験が行われた。実験は二段階に分けて行われた。第一段階では、斜面下部を道路施工位置まで二回に分けて切土を行い、六ヶ月間計測し、第二段階では、さらに2mの切土を行い、一ヶ月間計測した。ハイブリッド解析法による予測は、実験前に実施するType A予測で行われた。第一段階の実験結果に対して、Type A予測結果の妥当性を確認し、さらに第二段階の予測解析を行うことにより、第二段階の掘削深さを決定した。 以上の実大野外実験結果および解析結果に基づいて、極限つり合い法に基づく既往の設計法の問題点を明確にし、土と補強材とのひずみを適合させた極限つり合い法による簡便設計法を提案した。本簡便設計法では、すべり面と各補強材の交角および地山のせん断ひずみにより補強材の軸ひずみを評価する手法が導入されている。 補強切土実験に対するハイブリッド解析値と実測値あるいは簡便法による値とを比較することによって、以下の点が確認できた。 (1)ハイブリッド法による予測補強材軸力と実測値はほぼ一致している。 (2)実際に生じた小規模のすべり面はハイブリッド法による予測結果とほぼ一致している。 (3)予測破壊すべり面は、実測値より得た補強材の最大引張力が現れる点を通り、かつ簡便法によるすべり面とも整合性がある。 (4)ハイブリッド法による安全率は実測軸力値を用いて算定した簡便法による値とほぼ一致している。 以上により、開発したハイブリッド斜面安定設計法が補強切土斜面の挙動を適確に実現していることが明かになり、その実設計への適用性が確認できた。
|