本年度の研究成果の概要は以下の通りである。 (1).仙台市・七北田川を対象にして、河口部の完全閉塞過程を実測した。各種外力の経時変化と河口地形変化との対応を詳細に検討した結果、河口開口部の方向と波浪の入射方向が一致することが、閉塞の最大要因であることがわかった。このことから、閉塞に寄与する砂移動の方向は岸向きのものであり、沿岸漂砂ではないことが明らかになった。また、閉塞河川の開削後の地形変化過程も実測した。開削後、きわめて速やかに地形変化が生じ、閉塞前の動的平衡状態に移行した。 (2).上記河川を対象にして、河口部流れ場の一次元解析を行った。河口内水位、流速ともに実測値と良く一致する結果が得られた。また、水理条件・地形条件がかなり異なる二つの時期において最大流速がほぼ一致し、100cm/sec程度であった。無次元掃流力とで表現すれば2.0程度であった。七北田川の様な中小河川においては、(1)に述べた様に外力の変化に対する地形の応答が速い。今回の様に外力が大きく異なる時期においても、短時間の間にすでに平衡状態に近づいているため、ほぼ同一の流速値を保つものと考えられる。 (3).洪水時における河口部の地形変化現象は、一次元モデルでは詳細を表現できない。そこで、洪水時の移動床二次元計算を行った。実測された洪水時の河口水位、砂州のフラッシュ過程を表現するためには、従来提案されている流砂量公式を幾分変形して用いる必要のあることがわかった。 (4).平面水槽を用いて河口拡幅過程を実験的に調べ、側岸侵食量、河床掃流砂量を別々に評価した。その結果、河口最狭部より海側では砂移動の非平衡性が顕者であり、従来の平衡状態の流砂量式とは大きく異なる結果が得られた。
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