直線礫床河川の側岸部に樹木が存在すると存在しない場合と比較して水深が大きく、川幅が減少することが知られている。本研究では水深平均流れの運動量方程式を特異摂動法を用いて解き、その結果、樹木が存在する場合には底面セン断力が側岸部で減少する為に水深が大きくなることを明らかにした。これによれば、樹木の密度が大きくなるにつれて側岸部の勾配は急になり、最終的には水中安息角に等しくなることが知られた。更に、流路全体としての運動量の釣り合い式を考慮することにより、安定川幅が流量、勾配、粒径並びに樹木の密度の関数として得られた。その結果、樹木の密度が大きくなればなる程、川幅は減少することが明らかとなり、又川幅が減少する度合は流量が大きい程顕著に現れることも示された。樹木の密度を表わすパラメ-タが方程式から明らかにされたが、このパラメ-タが実際の河川でとりうる値は摂動展開の収束範囲内にあることが示され、本理論が実河川に適用可能であることが示された。本研究は自然河川を対象としている為に、理論の適合性はアメリカ合衆国及び英国の河川で得られた野外測定値と比較することにより確かめられた。その結果によれば、米国において観測された値は側岸に樹木がある場合にはない場合に較べて、水深が約60%増加し、川幅が約55%減少することを示しているが、理論はこの差を非常によく説明することができ、本理論の妥当性が確かめられた。我国の河川は人工の手がはいっており、低水路の水深、川幅はそれぞれ安定水深、川幅よりも大きく、小さく設計されていることが知られた。
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