研究概要 |
今年度の成果は以下の3点である。 1.乱流中の土砂の沈降速度について、統計手法を用いて解析解を求めその結果、同一の乱れ強度であっても乱れエネルギ-のスペクトル分布が高周波域に存在する程,粒子の平均沈降速度が小さくなることを明らかにした。又,実際の河川では乱れによって沈降速度が減少する割合は高々10%であることを示した。 2.植生や杭出し水制が存在するような場では流速分布に変曲点が存在し,このことにより流れが不安定となり、組織的な水平渦が発生することを理論的、実験的に示した。更に,この渦により、運動量や浮遊砂の水平混合率が非常に大きくなることを実験により示した。この増加量は植生がない場合に較べて約75%にも達した。以上より、河岸付近に植生がある場合には土砂沈降を飛躍的に増大させることを示している。又,礫床河川では河岸に植生がある場合には底面セン断力分布が変化し,このことにより,植生がない場合に較べて水深の増加,川幅の減少が起ることを理論的に示した。この結果は、従来から得られている野外測定の値を適切に説明するものであった。 3.砂床河川については植生や杭出し水制がない場合の安定水深・安定川幅について浮遊砂と掃流砂の平衡条件を考慮することにより理論解を得た。その結果,安定水深は河川の縦断勾配及び河床砂の粒径の関数であり,川幅はこれらの他に流量の影響を受けることが明らかとなった。この理論は従来から得られている実験値,野外測定値を適切に説明するものであった。
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