先ず、礫床河川の場合には側岸に植生が存在する場合の流速分布、剪断力分布を求め、この結果を用いて側岸部と河川中央部の接合点で限界掃流力となる条件から安定水深が得られた。更に、流路全体としての運動量釣り合い式が安定川幅を求めた。その結果、植生の密度が大きくなると水深が増大し、川幅が減少するという予測式が得られ、これは実河川における測定値を適切に説明するものであった。 砂床河川については、側岸部に沿って樹木がある場合に、運動量や浮遊の横断方向拡散係数を測定した。その値は従来河川中央付近で測定されていた値よりも約60%程度大きくなることが判明した。この値を用いて砂床河川の安定横断形状が求められた。又、このように拡散係数が大きくなる理由は、植生境界近傍で流速分布が変曲点を持つために流体力学的不安定が起り、周期渦が発生するためであることが示された。不安定解析の結果得られた渦の発生周期は実測値を適切に説明するものであった。側岸部植生内の土砂の沈降について取り扱うために乱流中の粒子の沈降速度がスペクトル応答の手法を用いて研究され、一般的な川の流れの条件では土砂の沈降速度は静水中の値よりも若干小さくなるが実用的には静水中の値を用いても差しつかえがないことが示された。以上の結果を受けて、側岸部に植生帯がある場合について浮遊砂の濃度分布や土砂の堆積速度についての理論的研究がなされ、実験によりその妥当性を確かめた。更に水制とその間に植生が存在する場合についての浮遊砂の堆積実験が行なわれ、水制は堆積作用を更に促進する働きがあることが明らかとなった。
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