底泥の輸送現象は、港内埋没やヘドロによる水質変化の問題に大きな影響を及ぼす。底泥の輸送は特に波浪と潮流・河口流が重なった場合に顕著であり、従って、波と流れの共存場における底泥の輸送機構の解明とその定量的評価が必要となる。本研究においては、波・流れ共存場における底泥の輸送に関連して、濃度計および粘弾性度計の開発を行い、それらを用いた実験を行った。 濃度計については、底泥の濃度変化による容量および抵抗の変化を調べたところ、容量の変化は有為でなく、抵抗変化が有為であったため、これを利用した測定装置を開発した。底泥にはカオリナイトを用い、電気分解と精度低下を防ぐために5kHzの交流を用いて、電極間の抵抗を測定する操置を製作したところ、濃度と電気抵抗との間に1対1の関係が得られた。これにより、実験水槽内において濃度分布の時間変化を測定することができるようになり、実測結果から拡散係数の測定も行った。 粘弾性度計については、2重円筒の内側部分をステッピングモ-タ-により任意に動かすことにより、波・流れ作用下での底泥に対する応力状態を実現し、その場合のひずみ・ひずみ速度と応力との関係を明らかにすることとした。ステッピングモ-タ-はパ-ソナルコンピュ-タにより任意に抑制し、また応力はひずみゲ-ジによりモ-メントを間接的に測定することによって得た。ステッピングモ-タ-の振動によるノイズの混入が若干問題となるものの、底泥の力学的性質をある程度明らかにすることができた。 以上の知見に基づき、波・流れ作用時の底泥の運動のモデル化を行い、数値計算によって運動をシミュレ-トした。
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