本年の主要課題は(1)流量の時・空間条件付き確率の算定、(2)マトリクス演算法による水量・水質の評価、(3)多目的評価とその統合化、である。 まず、課題(1)については、1次マルコフ性のもとで降雨の多地点同時シミュレ-ション法の定式化を行った。短期流出では貯留関数法とモンテカルロシミュレ-ションによって流量の条件付き確率を算定した。長期においては、半句単位としており、流量デ-タより直接確率分布を求めた。いずれも、最上流域で時間的条件付き確率、他の流域では、最上流域対する空間的確率とした。課題(2)については、マトリクスの確率要素を考慮した形、貯水池及び利水システムによる流量確率の遷移構造を明らかにした。治水においては、shift-operationによって合流過程の定式化が図れた。利水においては、貯水池操作・分流・消費・合流などの過程があり、各々の利用パタ-ンを想定して定式化を行った。その結果、並列・直列のダム群、支川流入、ダムと地下貯水池の有機的利用など任意のシステムでの流量確率の算定が可能となった。課題(3)については、安全度指標として、信頼度、回復度、深刻度を用いた。システム設計にあたっては、その建設・管理費用の最小化が目的となるが、信頼度を制約条件とした。回復度、深刻度も2次制約として取入れ、信頼度を満たす範囲内であるレベルまでは許容することにした。これは、多目的計画法でいう辞書編纂型に相当し、目的間に重みを付けた方法である。この基準によって、利水システムの長期管理シミュレ-ションが可能となった。また、水量の減少傾向を過程してシミュレ-ションを行い、長期気候変動下での耐渇水性のある利水システム策定の指標を得ることができた。次年度は、今年度の成果を基に研究課題の達成を図りたい。
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