今年度の研究では、最初に、通常ろ材として使用される珪砂を色によって、白、黄、橙、黄土、茶、黒、透明、半透明の8種類に分類し、各色のろ材に含まれる主要な成分をX線分析した。その結果、いずれの珪砂も酸素(O)とシリカ(Si)が主成分であり、その他では、例えば、白にはKとAlが、黄にはFeとAlが、黒にはCa、Mg、Fe、Alが含まれること、またAlはいずれの色のろ材にも含まれることなどが明らかになった。一般にAl系凝集剤が多く用いられることから、一部のろ剤について表面のAl分布を調べてみたが、ほぼ均一に分布していることが確認された。それと並行して、走査電顕によって各色のろ材の組成像を観察したところ、一部の例外を覗き、ろ材表面上の鉱物組成はほほ均一であるらしいことが分かった。 つづいて、小型のろ過実験装置(珪砂層厚さ60mm、空隙率44.3%)を用いて原水pH変動(pH4〜9.5)下におけるカオリンフロックのろ過特性の把握とろ層内抑留状況の推移観察を行った。原水中のカオリン、PACの注入率はいずれも20mg/l、ろ速は240m/d、ろ過時間4時間とした。ろ過水中の最低濁度とAl濃度の動きから、ろ過の最適条件はpH6.5付近に存在すること、またろ材上における懸濁物質の全体的な抑留状況に関しては、最適pHより酸性側ではろ材をすっぽりと包み込む被覆型、また最適領域を含めてこれよりアルカリ性側では閉塞型の抑留状況が出現した。これらのろ過実験ではろ材の色、すなわち、僅かな構成成分の違いによる全体的な抑留状況の推移にはなんらの変化も確認できなかった。 今後は、走査電顕によりろ材表面の物理的性状とろ過初期におけるカオリンフロックの捕捉部位の関係などについて検討することが必要である。
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